Wordsworth
and Bashō:
Walking Poets
Itami City Art Museum Kakimori Bunko (Hyogo, Japan)
→ 17th September ~ 3rd November 2016
ソブエは、フィレンツェ・ルネサンスのディゼーニョ(現代イタリア語のドローイング、デザインの語源)という方法論に影響を受け、また現代脳科学の知見にも示唆を得て、十年以上にわたり、墨とアクリル絵の具を使った独自のハッチング技法を発展させてきた。それによって、人間の見るという行為の本質に迫り、西と東を結ぶ美術の可能性を模索しているのだ。
今回ソブエは、日本の伝統的な襖絵に見立て、アルミニウム板を用いて四連画を制作した。ワーズワスと芭蕉の肖像が、時間と空間、文化と言葉を超えて向かい合うように配されている。ソブエは観念的に二人を結びつける方法として紅葉を配したが、紅葉はしばしば芭蕉の句の主題となり、またワーズワスが愛した木でもある。事実、ワーズワスはイロハモミジをライダル・マウントの庭に植えていた。
より忠実に芭蕉を描くために、ソブエはいくつもの芭蕉像を調べたが、どれも肖像として確実なものではなかった。しかし、調べるうちに、芭蕉の愛弟子であった許六が残した、芭蕉と曽良がおくのほそ道の旅に発つ姿を描いたものが、最も信頼性のある肖像であろうと考えるに至り、これを基礎に芭蕉像を完成させた。姿勢に関しては、江戸末期に活躍した浮世絵師の月岡芳年の作品を参照した。また、委託者の権勢を誇示するために金箔を用いた伝統的な日本美術の様式を踏襲して、背景に金色を施している。ソブエは、金箔の代わりに金色のアクリル絵具を使用することで、二人の詩人の慎ましく自然に即した生き方を表現した。(展覧会図録より抜粋 )
伊丹市立美術館柿衛文庫にて開催の『ワーズワースと芭蕉:歩く詩人』展。本展は、イギリスはワーズワース、日本は芭蕉という二大詩人の直筆原稿や書画などとあわせ、イギリス及び日本から総勢20余名の現代美術家の作品を一堂に集めたもの。柿衛文庫の所蔵品は俳書を中心とする書籍約3500点、軸物や短冊など真蹟類約7500点を数え、東京大学付属図書館の「洒竹・竹令文庫」、天理大学付属天理図書館の「綿屋文庫」とともに日本三大俳諧コレクションと称されている。
謝辞
ライダル・マウント前館長&キュレーターのピーター・エルキントンさんには特に謝意を表したい。ピーターさんは、作品が日本に郵送される前に特別に作品披露会を企画して、ボクの渡航費を用意してくださった。